第296章

島宮奈々未は厨房の裏手へ駆け込むと、そのまま細い路地に飛び込んだ。

 地面には生ゴミが山のように積まれ、鼻の奥をえぐるような悪臭が漂っている。

 ちょうど清掃用のゴミ収集車が、それを片づけて牽引しようとしていた。

 フォークが生ゴミの山を持ち上げる、その寸前――島宮奈々未は喉が裂けるほど叫ぶ。

「待って!」

 運転席の男がブレーキを踏み、身を乗り出した。見えたのは、イブニングドレス姿の美女がゴミ箱へ突進し、迷いなく中身をかき回している光景だ。

 運転手は島宮奈々未を知らない。だが、ホテルの馬田さんなら知っているらしく、怪訝そうに声をかけた。

「馬田さん、こちらの方は……?」

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